丈夫なオフィス改装

誰よりも明確に証明したのが、F大統領の財務長官アンドリュー・メロン氏であった。 そして実際に、彼が「腐ったところをすべて淘汰せよ」とやったら、アメリカのGDPは半分になってしまったのである。
ということは、生き残った企業にとっても需要は半分になってしまったのである。 しかも淘汰された企業で働いていた人々の生活は政府の負担となり、財政赤字は拡大する。
そこまでやったら、社会の治安も風紀も、想像を絶する速度で悪化しよう。 つまり、過当競争が発生している原因が、一部の産業のごく一部の企業の行動によるものなら、そこを淘汰・整理するのも一案だが、今のように全国的なバランスシート不況からくる総需要不足が、残った企業の過当競争の原因なら、唯一の解決法は需要を増やすことなのである。
アメリカのS&L問題のように、問題のある部分が全体の五%なら、前述のFRB幹部の言うようにそこを整理すればよいが、九五%に問題が発生している時は、まったく別の視点が必要なのである。 ここまで私は、日本は今バランスシート不況に陥っており、そのために、K首相が打ち出した構造改革の三つの柱のうち、本物の改革である「規制緩和や行政改革」は大いにやってほしいが、改革というより戦後処理の性格を持つ「財政再建」と「不良債権処理」については、今やるとかえって財政赤字と不良債権を拡大しかねないということを指摘してきた。
参院選の自民党圧勝という選挙結果を見るまでもなく、K首相の人気は大変なものである。 このKブームに乗って、改革が大いに進むことを多くの国民が願っていることだろう。
しかしこのブームに関しては、イメージと実態を分けて考える必要がある。 まだK内閣が発足して半年しかたっていないが、本章ではこれまでのK政権のあり方を検証しつつ、K首相がとるべき経済政策のベストシナリオについて考えてみたい。
まずK氏の高い支持率はどこから出てくるのかということだが、私はその原因の一つは、経済政策以外のところから来ているのではないかという気がする。 例えばK首相が従来の法律論や官僚論にとらわれず、ハンセン病元患者たちの苦闘を真に理解し、控訴断念というリーダーシップを発揮した。

これは歴史に残る立派な決断であった。 法律論が背広を着て歩いているような首相ではなく、本当に心のある首相が出現したことに、国民が喜んだのは当然のことだろう。
官僚たちを震憾させたあの決断が、彼の前任者たちにできたかというと、大いに疑問である。 同様に数年前、菅直人氏も薬害エイズ問題の原因を明るみに出したことで、一躍国民的英雄となり、次期首相とまでもてはやされた。
これらを見ると、厚生問題に関わる政治家の決断というのは、かなり支持率にプラスになるようである。 もう一つの高支持率の理由は、K内閣が掲げる、経済政策の持つ意味を理解しているマスコミが少ないことである。
それらの政策が具体化されていく過程で、彼がやろうとしていることが景気回復どころか、実は財政赤字や不良債権の激増を伴う景気のさらなる悪化ということになったら、今の支持率も大幅に後退してしまうだろう。 実際のところ今の国民は、何が何でも今の苦境から脱するきっかけとなる「変化」を望んでいるように思われる。
つまり、いくらゼロ成長が維持されてきたとはいえ、過去一○年間の不況は多くの人々にとって大変な苦しみをもたらした。 しかも、度重なる景気対策でも事態は改善しなかった。
そうなると、何かこれまでと違うことをドカーンとやってくれる人が現れれば、最低でも今よりは状況は良くなるだろうという期待が出てくるものである。 これは長い間病に悩んだ患者が、一か八かのショック療法で事態を打開できないかと願うのと同じである。
このような心理を英語で真っ暗なところで飛び降りると表現する。 これは一種の「やけくそ」の心理に近づいているわけだが、その背景にはこの一○年間、マスコミも政治家も、「この病気(バランスシート不況)は治療に時間がかかる」ということをはっきり国民に伝えてこなかったことがある。
つまり、「仮に飛び降りた場合は、下はすべて大恐慌という岩場であり、そのような事態に陥るのを防いできたのがこれまでの景気対策だった」ということを伝えてこなかったのである。 当初から「回復には少なくても一○年はかかる。
その理由は、大幅な資産価格の下落で穴が開いてしまった日本中のバランスシートを、個々の企業の借金返済努力で埋め合わせるには相当な時間が必要だからである」と説明しておけば、人々の期待もそのように準備されたと思われる。 しかし、実際には多くの政治家が、「この対策さえ打てば景気は明日にでも良くなる」と言うが、飛び降りた着地点がショックを和らげるに充分な水を持った池や沼ならともかく、そこが岩場だったら即死である。
現状はどうかと言うと、債券市場も株式市場も、低迷する株価と金利という大声で、そこは岩場だから飛び降りるなという警告を発しているが、マスコミや国民一般は飛び降りても最低でも今よりも悪くなることはないだろうという発想になってしまっているのである。 といったことを、ずっと言い続けてしまったのである。

もちろん、景気対策を打った直後は景気は上向くが、企業の借金返済行動が続いている限り、それが切れると再び景気は悪化する。 そうすると再度景気対策が必要となる。
そこでまた政治家は、「この対策さえ打てば景気は自律回復に入る」等と公約してしまう。 そのようなことをずっとやってきたので、国民はどんなに景気対策をやっても(公約されたように)景気は良くならないじゃないか、という印象を持ってしまったのである。
しかし、これは対策が間違っていたのではなくて、公約の方が間違っていたのである。 そして、この背景には、政治家とマスコミの大半が日本経済の病名が「バランスシート不況」であるということを理解していなかったことがある。
その結果、国民の大半は従来型の政治手法や経済対策に強い不信感をいだいてしまい、これまでとはまったく違う発想でやろうとするK政権にかけてみようということになってしまった。 この一般国民の「やけくそ心理」と、バランスシート不況を身にしみて感じている市場参加者の「無茶な改革は危険」という二つが、今の日本の最高の内閣支持率と最低の株価の両立を生み出しているものと思われる。
それでは、これがどう解消されていくかだが、やがて日が昇り、下の着地点が見えてくれば、そこは湖ではなくてゴリゴリの岩場であることが判明し、いくらなんでも今は飛び降りるわけにはいかないという認識が広がっていくだろう。 ただ、それまでは景気も株式市場も相当危険な事態に直面する可能性が高い。
というのも、今のK内閣は事態を正しく国民に説明するどころか、前述のピーター・タスカ氏が指摘したようにまったく間違った病名を前提に治療を進めようとしているからである。 例えば、K政権の経済政策の基本ともいうべき「骨太の方針(今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針)」が経済財政諮問会議で最終決定されたが、その内容はT経済財政政策担当大臣の構造改革の遅れこそ日本経済が停滞を続けた原因″とする問題意識に基づくものである。

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